「あの娘が不器量でよかった」──雇い主である侯爵夫人のそんな言葉を聞いてしまった、
家庭教師のセレスタイン。侯爵の弟シンクレアは放蕩者で、前任の家庭教師は
彼と戯れたためにくびになっていた。セレスタインは関節炎を患っているし不器量だと
自覚しているものの、自分がすぐに採用された理由が教養以外のところにあるとは
考えてもみなかった。不器量だから採用されたなんて、誰が想像するだろう。
しかし、地味な未婚の家庭教師などは相手にされないと思っていたのに、
なぜかシンクレアはセレスタインに近づいてきて──。