貧窮した良家の子女としてとれる道は、ふたつしかない。
結婚か、いい職を見つけるかだ。数年ロンドンで暮らして社交シーズンも体験したが、
二十四歳になったマーサは結婚相手を見つけることができなかった。
生活のために家庭教師の職を得た彼女は、
母親を亡くしたばかりのわがままな令嬢を教えることになった。
屋敷の主人であるコナンは優雅な雰囲気があるものの横柄で、
世間に向けた表の顔と隠している裏の顔があると感じられる。
そして、屋敷内では、なにかおかしなことが起きているような気がしてならない。
しかし、マーサにはこの職が必要で……。